洋風ちんすこう(仮)

よく何もないところでつまずいてコケるアラサー会社員の備忘録。

甲子園は今日も平和です

昨年6月、久しぶりに甲子園球場へ行ってきた。

祖父の代から阪神ファントラキチの英才教育を受けてきた僕。

小さな頃から親子で甲子園には足しげく通っていたが、大人になると仕事の忙しさと、幼少の頃に好きだった選手がみんな引退してしまったのもあり少し興味が冷めてしまっていた。

しかし昨年、ある選手を知り、ファンになったのをきっかけに阪神熱が再燃。
もう一度スタンドで見たい!と、はるばるやってきた。一人で。

17時過ぎに阪神甲子園駅に到着。いそいそとライト側の入り口、21号門へ。

球場の外周通路から、一気に視界が開けてグラウンドが広がる世界には、いつも少年のようにワクワクする。

ライトスタンド中段あたりの席につくと、周囲は阪神ファンで8割方席が埋まっている。
ぼくの隣の席には阪神のユニフォームを着たおじいちゃん。
色味から、かなりの年代物なのが伺える。
もしかして1985年に日本一になった時のものだろうか。

18時、試合が始まった。

今日の相手は北海道日本ハムファイターズ。もともと阪神とは所属しているリーグが違うのだが、この日は交流戦という形で他リーグのチームと対戦する日だ。

ファイターズの監督に元阪神SHINJOビッグボスが就任したこともあって話題になっていた。

序盤は劣勢。タイガースは3回までに7点を取られ、先発のウィルカーソンが降板。ライトスタンドからはため息が漏れる。

僕も例に漏れず、この段階ですでに帰りたかった。
本当に、めちゃくちゃ帰りたかった。
ただ、久しぶりの甲子園。勝ち負けにこだわらず、試合そのものを楽しみに来たと思えばいい!と思い直す。
そうだ。僕は甲子園のスタンドで、名物の焼鳥とビールを頬張りに来たのだ。甲子園の焼鳥はとてもおいしい。

すると4回から、タイガースの反撃が始まる。
打線が繋がり始め、6回を終わって5-7。2点差まで詰め寄ったのだ。

半ば諦めかけていたタイガースファンも、テンションを盛り返す。
そうだ。戦っている選手は誰ひとり、勝利を諦めていないのだ。

そしてタイガースは8回、ついに一打同点のチャンスに漕ぎつける。
打席にはなんと、僕がこの日ユニフォームを着て応援している、最近ファンになった山本選手だった。

祈るように見つめる僕。隣のおじいちゃんは何故か上本という別の選手のタオルを掲げて「うえもとー!」と声をあげている。
おじいちゃん、上本はもう引退したよ。

するとその時だった。
カァン、と山本が放った打球は、一二塁間を抜けていくタイムリーヒット
タイガースはついに、7‐7の同点に追いついた!

7点差を追いついた怒涛の展開に、ファンは大盛り上がり。
全員立ち上がり、メガホンを掲げながらみんなで喜びを分かち合う。
山本のユニフォームを着ているのは、周囲では僕しかいなかったため、僕は周りの方々にメガホンで袋叩きにあった。

「山本!ようやった!ありがとう!!」と僕をボコボコにするおっちゃん。
「ようあそこで打てたねえ」と涙ながら僕の手を取り祝福するおばちゃん。
「今の気持ちはいかがですか?」とインスタライブしながらインタビューしてくる亀田興毅似の兄ちゃん。勝手に撮るな。
というか、僕がヒーローのように祝福されているが、僕は山本ではない。

隣のおじいちゃんはずっと「あれは上本が打ったんか~?」と聞いてきた。
だからおじいちゃん、上本はもう引退したよ。

結局、試合は9-7で逆転勝利。今シーズンの中でもベストゲームと後から言われるような一日となった。

僕はこの熱狂をはっきりと思い出した。これだ。この熱狂を感じにきたのだ。ファンと選手が心をひとつにして戦い一喜一憂する。ここに甲子園の良さがある。
甲子園のライトスタンドに来たのは20年ぶりだが、本当に楽しかった。
帰りの阪神電車の大混雑でさえも愛おしく思えた。

もうすぐ待ちわびた球春がやってくる。

全国のプロ野球ファンのみなさん、今年も球場で会いましょう。