洋風ちんすこう(仮)

よく何もないところでつまずいてコケるアラサー会社員の備忘録。

知らない町のフィリピンラウンジと僕①

 

寒い。寒すぎる。

日本中が大寒波に見舞われている。

 

僕の住む大阪は、全国の中でも比較的温暖なことで知られる。

2000年からの気象観測の中では、数センチ以上雪が積もったのはまだ数回しかないらしい。

具体的に何回だったのかは知らないし、調べるのがめんどくさいのでこれで許してください。

 

そんな大阪でも雪がちらつき、最高気温は4℃。

通勤中、顔面にぶち当たる粉雪の冷たさを感じながら、そういえば前もこんな感じだったな、と思い出したものがあった。それは確か1年前の冬のこと。

 

 

当時の僕は、うつで仕事を休職していた。

半年ほど時間をもらい、ゆっくり療養に努めていた。

 

そんな時、気晴らしに旅行に行こうと考えた。

どこに行こうかと悩んだ結果、決めた行き先は信越地方

 

僕は学生時代に47都道府県を巡る一人旅をしたこともあり信越にも何度か行ったことがあったが、大体春から夏にかけてが多かった。今回は冬の雪国に行ってみたかった、というのが大きな理由だったと思う。

 

大阪から新幹線で東京へ行き、そこから上越線普通列車でガタゴト揺られながら新潟へ入った。

それから富山、金沢と通過して上りのサンダーバードで帰ってくるという、日本の真ん中を大きく円を描くようなルートだったのを覚えている。

 

早朝、大阪駅を出発して新潟にたどり着いたのは19時頃だった。

よし、晩御飯を食べよう。

食べログで調べた地元の居酒屋に入り、1時間ほど呑んだ。

 

 

居酒屋を出て時計を見ると20時半。まだホテルに帰るのは早い。

一人でやってきた僕はふと「誰かと話したいな」と思った。

ダメだ。さっき飲んだ越後日本酒飲み比べセットがばっちり効いて、気が大きくなっている。

何か地元のバーやラウンジのような場所へ行きたいと思った。

気づけば足は歓楽街の方へ向いている。

 

新潟の歓楽街は、JR新潟駅からは少し離れた場所にある。

ただ、知らない街を眺めながら散歩のように歩くと、到着するまであっという間だった。

 

 

歓楽街をふらふらと歩きながら、お店を物色する。

大阪に比べるとどうしても規模は小さいが、まとまっていて巡りやすく、ネオンが眩しい。

 

さすがに知らない土地でお店に飛び込むのは怖いし、ネットでまずは調べるか…と立ち止まった瞬間、一人の年老いた男性が声をかけてきた。

 

「今だけ、2時間3000円ポッキリ飲み放題、どうだい?」

「え?」

「お姉ちゃんもいるよぉ」

 

男性は70代ぐらいで、青いスヌーピーのニット帽を被っていた。

見た目はどう見てもよくいるようなキャッチには見えない。誰だアンタは。

 

「本当に2時間3000円で飲めるんですか?」と僕は聞いた。

「うん、今日お客さん全然でね、3000円コミコミでいいよぉ」

 

「いいよぉ」と語尾が伸びるのが気になるし、お店のオーナーとかにも見えない。近所に住むただのおじいちゃんに見える。

 

 

少し考えて、僕は答えた。

「本当に3000円だけでいいのなら行きます」

気が付けば、僕は声をかけられた恐怖よりも、「このおじいちゃんについていったら一体どうなるんだろう」という好奇心の方が上回っていた。

もしぼったくられそうになったら走って逃げよう。

 

 

(長くなったので明日に続きます)

tamismita.hatenablog.jp